この電卓からマイクロプロセッサは始まったんだよ! BUSICOM 141-PF

沿って : Ilikephone / On : 07/02/2023

 1972年9月、株式会社リコーのある取締役のところに国際電話が入った。電話をかけたのはアメリカの半導体メーカー、インテル社の社長で、半導体の神様といわれたロバート・ノイス。そんな人物からの突然の電話に取締役は驚いたが、その用件にはさらに驚いた。

 「嶋という技術者をうちの会社にくれないか」

 ノイスのあまりにも異例の要求に、取締役は、最近入社したばかりの嶋という若者を呼んで問い詰めた。

 「いったい君は何者なんだ?」

この電卓からマイクロプロセッサは始まったんだよ! BUSICOM 141-PF

 嶋正利。71年にインテル社から発表されたマイクロプロセッサ「4004」を弱冠28歳で開発した人物である。

 マイクロプロセッサとは、ふだんわれわれの使っているパソコンの心臓部に使われているチップのこと。心臓部はCPU(Central Processing Unit)といわれ、一般にはプロセッサと称されるが、パソコンの場合は一つのチップに集約されている場合が多く、特にマイクロプロセッサと呼ばれている。嶋氏は、『次世代マイクロプロセッサ』(日本経済新聞社)の中で、

 「マイクロプロセッサ、パソコン、ワークステーションの発明や開発とは、古い権威主義的な既存システムから自由を個人に取り戻すための破壊と改革、そして新たな価値を持った新システムの建設と価格破壊であった、とも言える」

 と述べているが、まさにマイクロプロセッサの発明は、コンピュータ利用の自由主義、個人主義への幕開けでもあったのである。