MSX-Write内蔵でプリンタも一体化したMSX2パソコン「SANYO PHC-77(WAVY77)」

沿って : Ilikephone / On : 03/01/2023

ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

キーボードが蓋のようになっていて、開けることでこのような形になります。折りたたみケータイならぬ、折りたたみパソコンと言えるかもしれません。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、サンヨーがWAVYシリーズの1機種としてリリースした、MSX-Write内蔵のMSX2パソコン「PHC-77」を取り上げました。発売は1986年。

 1987年にもなると、MSX2パソコンは3万円前後で購入が可能なお手頃価格モデルと、10万円をオーバーする金額で売り出されたセパレートタイプという、2種類に分かれたラインアップで展開していました。前者としてはFS-A1などが有名ですが、後者に分類されワープロパソコンとして市場に送り出されたのが、今回取り上げたサンヨーのWAVY77ことPHC-77です。

広告では、“ワープロ・パソコン”ということを前面に押し出していました。写真もおしゃれな感じになっていて、その雰囲気に合った(?)将棋ソフトの『棋太平』(SPS)が置かれています。

 ハード面での特徴として、10万円を越える価格ながら本体とキーボードが一体になっているものの、そのキーボードは本体上部へと折り畳むことが出来るだけでなく、付属している取っ手部分を掴んで持ち運ぶことができるようになっているという、今までにない形状をしていました。

 取っ手が付いているMSXパソコンと言えば、日立がリリースしていた初代H1などが有名ですが、重量はH1が約3.5kgだったのに対してWAVY77はプリンタを内蔵している都合上、約4.7kgと1kg以上重さが増してしまっています。重量を考えると、WAVY77を自宅から持ち出し友人宅へ持ち運んで使うというような活用方法ではなく、あくまでも家庭内での移動のみが想定されていたのではないかと思われます。

キーボードをたたんで閉じた状態です。ロゴは、背面から見た時に正しい位置になるように配置されていました。

MSX-Write内蔵でプリンタも一体化したMSX2パソコン「SANYO PHC-77(WAVY77)」

 本体の半分を占めているプリンタは24ドット熱転写方式で、はがきサイズからA4まで明朝体の文字で印刷することができました。この頃はまだまだ暑中見舞いや年賀状を積極的に出す時代でしたので、面倒な宛名書きや文面の記入を代行するという名目で本機を購入してもらった人もいるかもしれません。

 上面にカートリッジスロットを2つ、右側面に2DD対応の5インチFDDを1基搭載していたほか、メインメモリは64KB、VRAMは128KBを搭載。画面出力方法もアナログRGBにくわえ、コンポジット出力とRF出力も備えていました。カートリッジだけでなく、ディスクで供給されたソフトも遊べたことを考えると、末永く使えた良機だったと言えるでしょう。

本体の上半分は、このようにプリンタが占めています。カートリッジスロットの右側には“パソコン”“ワープロ”と書かれたスイッチが配置されていて、これをパソコン側にすればBASICが起動し、ワープロ側に移動しておくとメニューが表示されました。本体右側面には紙送り用のローラーのほか、ジョイスティック接続端子が2つと印字濃度を変更するつまみ、そして3.5インチFDDが搭載されていました。左側面は、電源スイッチのみです。

 カートリッジスロットの右側には“パソコン”・“ワープロ”と書かれた切り替えスイッチが設定されていて、これを“パソコン”側にしておくことで、電源オンで即座にBASICが起動します。スイッチを“ワープロ”側にスライドさせてから電源を入れるとメインメニューが表示される仕組みで、この場合は“日本語ワープロ”、“システム構成”、“BASIC”から選択することができます。

キーボード部分です。スペースキーの所に“漢字変換”と書かれていたり、ファンクションキーの部分にも青字でMSX-Write使用時での機能が記されていました。ファンクションキー上部にはLEDが配置されていて、電源オン、CAPSキー・かなキー押下時に光るようになっています。

 メニューから“日本語ワープロ”を選ぶと、内蔵されているMSX-Writeが立ち上がります。広告を見ると「変換方式としては、この時期の16ビット機などで使われていた“2文節最長一致法による複文節仮名漢字変換方式”を採用」していたとありました。

 これにより、最大40文字の一括入力・一括変換が可能となっています。だからといって、変換が賢いかどうかはまた別の問題になるわけですが……。実際に使ってみると、次々候補以降が一覧で表示されなかったり、文節を明確に指示しないと正しく変換しないなど、現在の日本語仮名漢字変換システムに慣れた身としては厳しいです。しかし、1987年にこのレベルで入力が出来たと言うことを考えれば、かなりの上出来だったのではないでしょうか。

左がMSXモードで、がMSX2モードを選んだ時のMSX-Write画面です。MSX2モードの方が画面が広く使えますが、MSXモードでは1文字1文字が大きいので、この記事を読むような大きなお友達には目に優しくて良いでしょう?

 なお、“システム構成”を選択した場合は画面構成や背景色など、5つの項目をそれぞれ好みに合わせて選べる画面が表示されます。画面モードでMSX2側に設定すれば、MSX設定の倍となる30文字を一列中に書けました。また、本機は第1水準漢字を最初から内蔵していますが、第2水準漢字ROMを何らかの形で増設した場合は、ここから選ぶことで使うことができるようになります。

メイン・メニューからシステム構成を選ぶと、各種設定を変更出来ます。文書の保存先はFDDのほか、カセットテープも選べました。

 これだけの機能を搭載していたということで、セパレートモデルのMSX2パソコンと似たような価格となる138,000円が設定されていました。あわせて、プリンタやMSX-Writeなどを省いた廉価版とも言えるモデルとなるPHC-23J(WAVY23J)も32,800円で発売されています。

本体背面は左からリセットスイッチ、CMT端子、オーディオ出力端子、ビデオ出力端子、RGB端子、チャンネル切り替えスイッチ、RF出力端子、プリンタリセットボタンとなっています。電源は、俗に言うメガネケーブルが使えます。