オンデマンドで再プログラム可能なICチップ、AIの継続学習を可能に 米パデュー大学などが開発

沿って : Ilikephone / On : 21/08/2022

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研究チームが開発したICチップ

オンデマンドで再プログラム可能なICチップ、AIの継続学習を可能に 米パデュー大学などが開発

 米パデュー大学と中国の北京航空航天大学、米ペンシルベニア州立大学、米サンタクララ大学、米Argonne National Laboratory、米University of Illinois Chicago、米Brookhaven National Laboratory、米ジョージア大学、米ポートランド州立大学による研究チームが開発した「Reconfigurable perovskite nickelate electronics for artificial intelligence」は、オンデマンドで再プログラム可能なICチップだ。ニューラルネットワークが人間の脳のように継続的に学習し続けることをサポートする。 新しいデータをニューラルネットワークに段階的に入力すると、以前に学習した知識と干渉し、パフォーマンスの低下をもたらす。このように過去の学習を忘れてしまうことを破局的忘却(Catastrophic forgetting)と呼び、課題の1つとして残っている。 一方で人の脳神経は、外部刺激などにより、常に構造的な変化が行われる可塑性の性質が備わっているため、ニューロン間に適宜新しい接続を形成しており、新しい情報に適応し継続的な学習を可能にする このように脳は必要に応じて常に変化するが、ICチップの回路は変化しないため、コンピュータによる継続的な学習は困難を極めていた。これはソフト側ではなく、ハード側も動的にする必要性を示している。今後、自律性の高い機械学習を搭載するマシンを構成する上で重要になるだろうという。 研究では、ICチップが脳のように新しいデータを取り込むために動的に再プログラムし、コンピュータが時間をかけて学習し続けるのを助けるデバイスを提案する。このデバイスは、ペロブスカイト構造を持つニッケル酸化物(ReNiO3)で構成する。 ReNiO3は、金属から絶縁体(もしくは絶縁体から金属)へ相転移により電気伝導率が大きく変わる性質を持つ。 ReNiO3は、 軽く小さいプロトン(水素イオン)をドープ (物理的性質を変えるために不純物を添加すること)することで、室温において大きく電気抵抗が上昇することも知られている。 さらに、その水素イオンを制御することにも先行研究で成功している。プロトンドープによる抵抗変調は、これまでよりも巨大である。通常の電子制御では不可能な抵抗変調が行えるため、プロトンドープとReNiO3を組み合わせたデバイスが注目されている。ICチップに応用したのがこのデバイスだ。 実験データを用い、リザバーコンピューティングの深層学習フレームワークをシミュレーションした結果、静的なネットワークよりもこのデバイスを用いたネットワークの方が、数字認識や心電図パターンの分類などのタスクで優れた性能を示した。また、100万サイクル以上の状態切り替えを繰り返しても安定していることが確認できた。Source and Image Credits: Zhang, H. T. et al. “Reconfigurable perovskite nickelate electronics for artificial intelligence” SCIENCE. 3 Feb 2022, Vol 375, Issue 6580, pp. 533-539 DOI: 10.1126/science.abj7943 ※テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

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