飛行機の開発に関わる施設(10)電磁波関連の施設

沿って : Ilikephone / On : 21/01/2023

IBSTで試験中の、P-8Aポセイドン哨戒機。周囲の壁の構造に注目

パタクセントリバー基地は一般公開イベントで訪れたことがあるが、もちろんIBSTを一般公開するはずもない。だから、航空写真に写っている建屋のうち、どれがIBSTなのかはわからない。しかし、実機を入れて試験するのだから、駐機場や滑走路から出入りできる場所にあって、かつ、実機が余裕をもって収まるぐらいの規模はあるのだろうな、という推測はできる。

電波暗室とRCS計測

電磁波が絡む施設としてもう一つ、電波暗室がある。音響に関する試験を行うために「無響室」という設備があるが、あれの電磁波版だと考えてもらえばよい。実際、内部の見た目はよく似ており、電磁波が壁面で反射して供試体のところに戻って来ないように、「△△」を並べたようなつくりになっている。

飛行機の開発に関わる施設(10)電磁波関連の施設

電波暗室は、例えばレーダーや電子戦装置をテストする際に使用する。また、ステルス機であれば、レーダー反射断面積(RCS : Radar Cross Section)の計測にも使用する。

F-35戦闘機の組み立てを実施しているテキサス州フォートワースの空軍プラントNo.4(これをロッキード・マーティン社が運用している)には、製造・組み立てラインや塗装施設とともに、最後にRCS計測の試験を実施するための電波暗室もある。組み立てや塗装の施設は見せてもらえたが、さすがに電波暗室は見せてもらえなかった。

なお、RCSの計測は電波暗室みたいな屋内で実施するものとは限らず、屋外で実施する事例もある。そのための施設の一例が、ニューメキシコ州ホロマン空軍基地にあるNRTF(National RCS Test Facility)

なんにしても問題になるのは、供試体となる機体を支える支柱。なぜかというと、その支柱もレーダー電波を反射してしまうからだ。それを真に受けて「レーダー電波の反射が大きいです!」となったのでは仕事にならない。だから、RCS計測の際には、機体を支える支柱の設計も問題になる。

著者プロフィール

井上孝司

鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。