EV普及を保険でサポート。マーシュ ジャパンのカーボンニュートラルへの挑戦 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

沿って : Ilikephone / On : 23/05/2022

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マーシュ ジャパンの鈴木 聡

日本におけるEVの売れ行きが好調だ。しかし数年前の黎明期には障壁も多く、なかでも自動車保険については課題が山積していた。保険仲介とリスクマネジメントの世界的大手マーシュの日本法人・マーシュ ジャパンの鈴木 聡にEVへの挑戦の軌跡と今後の展望を聞いた。
EV専業メーカーのスタートアップが日本市場に本格的に参入を開始したのは2015年。以降、多くの海外メーカーが新規参入を図っている。しかし、日本国内での電気自動車販売開始にあたり、彼らはさまざまな壁に直面した。そのひとつが自動車保険だった。 「日本の自動車保険市場はシステムが複雑です。例えば、全保険会社が使用する事故歴に応じた任意保険の等級制度は、日本へ新規に参入する外資系企業にとって奇異に映るのです」と、鈴木は言う。確かに、アメリカなどでは、州ごとの制度の違いや保険会社ごとの保険商品の独自性もありえる。一方、日本では、50年以上かけて国と業界とがともにつくり上げ、また時代の変遷に合わせてアジャストを施してきたさまざまな業界共通のルールを各保険会社が維持運営するという、ユニークな保険市場となっている。こうした日本独自の制度が、EVメーカー各社の自動車保険設計時には障害になりえる。例えば、「型式別の保険料設計」制度がそうだ。自動車の型式とは車種やモデル、グレード等を判別するための識別番号のことで、車検証にも記載される。日本の自動車保険は、この型式ごとに損害保険料率算出機構が計算した「保険料の基礎数値」をベースとして保険料が計算されている。一方、この型式認証にはクラッシュテスト(安全性確認のための衝突試験)など費用がかかるため、販売台数がさほど多くないEVスタートアップ企業にとっては大きな負担となる。型式認証を受けない車は「型式不明車」として例外扱いされ、機構から個別の車両ごとのデータの提供を受けられない。そのため通販型自動車保険(ダイレクト型自動車保険)では保険料試算サイトで車名を入力しても保険料が表示されないケースも多い。ユーザーに保険加入の機会を提供できないことは、EV普及に大きな影響を与えかねない。 「参入企業は、経験と知見がないなかで日本のマーケットを手探りで調べなくてはならなかったのです」マーシュ ジャパンでは、このような日本独自の状況をEVメーカー各社に理解させ、さまざまな施策を基に保険会社との連携を図っていった。 クライアントとユーザーのため、そしてカーボンニュートラルに向け奔走するMarsh Japan/Affinityチームメンバー(写真左から)熊谷 博、鈴木 聡、高山裕貴、加藤拓之

EV特有のリスクをカバーする商品開発

当時、EV市場のポテンシャルは未知数だった。どれだけ販売余地があるのか、保険契約はどのくらい獲得できるのか。加えて、ディーラーの販売網という常識から離れ、インターネット経由の販売に挑戦する企業も現れており、当時の日本の保険会社はEV専用の商品開発には腰が重い状況だった。 しかし、これでは事態は進展しない。EVに最適な補償を提供できなければ、そのままEV購入の足かせとなりかねない。「保険会社のトップマネジメントに『マーケットニーズに応えられるようあらゆる方法でご検討いただきたい』と直談判するなど奔走し、各EVメーカー独自の保険商品導入をサポートしました」 結果として、EVは当時の予想以上に普及が進んだ。あるEVメーカーの21年1月〜9月の新車登録台数は推定で1.5万台を記録、早くも20年の1年間の販売台数を上回っている。保険会社と導入に奔走したEV専用商品も普及の一助になったのかもしれない。保険内容検討にあたり、EVならではの課題も見えてきた。例えば、ユーザーにとってのいちばんの不安は「走行中にバッテリーが切れたらどうするのか」である。 現在、EVの普及率が高いのは集合住宅の多い首都圏だが、電気自動車用の充電ポストがすべての集合住宅にあるとは限らない。携帯電話のバッテリーならすぐに充電できるが、EVはそうはいかない。ガソリン車であれば、近くのガソリンスタンドに行けばよい。しかし電気の場合はもち運びができないうえ、充電できるスポットがまだ限定的だ。航続距離、つまりガス欠ならぬ「電欠」の問題に対する不安が大きいのだ。「保険会社と交渉し、電欠の場合の対応を補償対象に追加しました。『万が一の場合、充電スポットまでの導引費用は保険でカバーできます」とお伝えすると、安心していただけます。ユーザーの不安を少しでも和らげられるよう貢献できれば、クライアントのブランド認知度拡大につながり、販売しやすい環境も整う。結果、EV普及率アップにつながっていくと思うのです」 さらに、3〜5年といったEVメーカーの保証期間後をカバーする延長保証を提供することによりユーザーの安心感も高まった。「有償ではありますが、安心材料になるとご評価いただいており、実際に加入される方も相当数いらっしゃいます」 ただし、なかには保険でヘッジできない、あるいは保険化すべきでないリスクも存在する。この場合、マーシュがリスクを最小化するようなソリューションを提案する。「自動車事故のなかには命に関わるものもあります。また、それが事故につながらなくとも、実際にはリスクとして潜んでいるケースは多々ある。クライアント(企業)だけではなく、エンドユーザーのさまざまなリスクを解消するスキーム、商品、サービスを設計するのが我々の仕事であり、使命だと思っています」

最適な補償サービスの提供を通して、サステナブルな社会へ貢献

EV購入の障壁を取り除くことで普及率を引き上げ、カーボンニュートラル実現に貢献する。リスクアドバイザリーとして、企業、ユーザー双方に保険というリスクソリューションを提供し、広く社会の課題解決に貢献する。マーシュ ジャパンが見据える未来の世界は広い。「リスクマネジメントのソリューションのひとつとして保険を提供するのが我々のビジネス。一つひとつはわずかな改善であっても、積み重なれば大きなサポートとなり、SDGsの課題解決に貢献できると信じています」 カーボンニュートラルをキーワードにビジネスも文化も変化していくであろう。「新しいビジネスや社会が生まれれば、リスクも変容していきます。私が所属するAffinityチームはB2B2Cのビジネスを取り扱っており、こうした新しいリスクにも対応する多様な補償サービスをクライアント様とともにエンドユーザー様にご提供しています。新たなリスクに対応するためには、まだこの世にない斬新なアイデアや知識が必要です。当社の世界130カ国に及ぶグローバルネットワークを活用し、検討を尽くします」 環境への負荷を考えてEVを購入して貢献したい、というユーザーのリスクへの備えをサポートしていく。マーシュ ジャパンのように、新しい未来社会の実現に向けた挑戦を積み重ねていくことによって、世界は少しずつ変わっていくのかもしれない。 マーシュ ジャパンhttps://www.marsh.com/jp
鈴木 聡◎1992年、千葉県千葉市出身。英サセックス大学国際ビジネス学部卒。2020年マーシュ ジャパンに入社、Affinityチーム内のAuto Unitにて欧米系輸入車インポーターのリスクマネジメントに従事。

Promoted by marsh japan / text by Yumiko Tan / photograph by Munehiro Hoashi(AVGVST)

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