【大河原克行のキーマンウォッチ】上坂貴志社長に聞く、キンドリルジャパンが戦略や方針に「DX」の文字を使わない理由 - クラウド Watch

沿って : Ilikephone / On : 07/04/2022

お客さまへの説明に時間を割いた

――2021年9月の設立以降、どんなことに力を注いできましたか。

 キンドリルジャパンの設立にあわせて、日本IBMと契約をしていただいていたお客さまに説明を行い、日本IBMとしてお約束をしていたことは、キンドルジャパンがしっかりと引き継ぐこと、それに加えて、分社したことにより、お客さまに提供できる新たな価値を説明することに時間を割きました。

 日本IBMの山口明夫社長が同席する場面もありましたし、キンドリルとしての方向性をしっかりと聞きたいというお客さまには、私たちだけでお邪魔するということもありました。

――顧客の反応はどうでしたか。

 なかには「分社して大丈夫なのか」といった率直な意見もいただきました。ただ、日本IBMのグローバルテクノロジーサービス(GTS)事業が独立した企業ですから、お客さまの担当者もリーダーも責任者も変更がないことを説明し、もし懸念していることがあれば、それに対しては、ひとつひとつ丁寧に対応していくことをお話ししました。

【大河原克行のキーマンウォッチ】上坂貴志社長に聞く、キンドリルジャパンが戦略や方針に「DX」の文字を使わない理由 - クラウド Watch

 キンドリルが進む方向はシンプルです。しかしシンプルであるがゆえに、強さや深さが求められ、そこにお客さまの期待があると考えています。多くのお客さまが悩んでいるのは、システムをいかに安定させるのか、コスト構造を含めてシステムをどう刷新するのかなどです。そこにキンドリルがしっかりと貢献できないと、日本のお客さまの変革が止まってしまうという危機感を持っています。

 CxOの方々とお話をして、キンドリルが目指しているところを説明すると、「そういうことだったのか」と理解を示していただけるお客さまが多かったことに手応えを感じています。

キンドリルのCustomer Success&Service Excellence

――それは、どんな点ですか。

 理解をしていただける背景にあるのは、企業が直面しているいくつかの課題です。ひとつめは、多くの企業はベンダーロックインの状況にならないために、さまざまなベンダーの製品やソリューションを活用してシステムを構築していますが、これを統合し、運用を任せられる企業がないという実態でした。特定のベンダーに偏らず、お客さまの目線やプライオリティで、統合・運用を任せられる企業がなかったのです。キンドリルがIBMの資本を入れず、独立した形で事業を行うことを選択した理由はそこにあります。

 2つめは、企業のエンジニアの構成を見ると、基幹システムを構築した人たちが高齢化し、その直後の世代はバブルの影響もあって採用が控えられ、さらに今の世代は、基幹システムに触れる機会が少ないという状態が生まれているという点です。エンジニアの年齢分布には「ふたこぶラクダ」のような状況が生まれており、シニアの知識や技術をどう継承するか、若い世代に対してインフラに関する知識やスキルの育成をどう行っていくかという点に課題を持っています。キンドリルジャパンの強みは、システムインフラに精通した社員が数多く在籍していることであり、こうした課題を解決するお手伝いをするには最適な企業だといえます。

 そして3つめには、こうしたシステムの複雑化や社内の人材育成の課題に加えて、中期経営計画の成長にあわせたシステムをいかに構築していくか、コストの効率化をどう図るか、クラウドマイグレーションをどう考えるかといったさまざまな課題に対して、お客さまが悩んでいるという実態があるという点です。

 DXを支援しますという企業は多いのですが、これからのDXの推進には、ミッションクリティカルの知識をどれだけ持っているのかが重要な要素になります。キンドリルは、長年の歴史のなかで、メインフレームを中心としたミッションクリティカルシステムの構築、運用に関するノウハウを持ち、今後も、ここに継続的に取り組んでいくことを示しています。これをうたっている企業は、実は少ないのです。クラウドシフトが起きるなかでも、ミッションクリティカルのノウハウは、ますます重要になります。キンドリルが、基幹業務をお預かりするという姿勢や責任感、そのための備えを持ち、一緒になってクラウドシフトに臨めることは、お客さまにとって大きな価値と安心感を提供することにつながります。

 このように、CIOが「困っている」という領域に対して、キンドリルがお役に立てること、そして、今後の社会の姿を見据えて、キンドリルを設立したことは、多くのお客さまに理解をしていただけたと思っています。