社長と2人で開発 ピーアップがニッチなスマホを作り続ける理由(1/3 ページ) - ITmedia Mobile

沿って : Ilikephone / On : 21/11/2022

 市場規模の大きさから、海外メーカーやスタートアップの新規参入も多いスマートフォンだが、その事業を継続できているところは思いのほか少ない。XiaomiやOPPOのような大手メーカーが定着しているのは、むしろ例外と言っていいかもしれない。そんな中、キャリアショップや併売店の「テルル」を運営するピーアップが開発したMode1シリーズは、着実にラインアップを増やし、販路も徐々に広げている。2015年12月に発売した初代Mode1から丸6年がたった今でも、変わらず端末を投入し続けている。

 スタンダードなSIMロックフリーのスマートフォンを投入してきただけでなく、フィーチャーフォンのように折りたためる「Mode1 RETRO」や、横幅が狭く手にフィットする「Mode1 GRIP」といった一風変わった端末を投入しているのも、同社の特徴といえる。価格は端末ごとに異なるが、2万円前後から3万円前後に収まっており、手に取りやすい。こうした価格のスマートフォンの中には、中国のODMが持つベースモデルを使って色や外観など、一部の仕様だけを変えただけのものも多いが、Mode1シリーズは1機種を除き、あくまでピーアップの独自設計で開発しているという。

2021年10月に発売した「Mode1 GRIP」

 同じ携帯電話業界にいたピーアップだが、端末の企画・開発と販売ではその役割が大きく異なる。では、なぜ同社はスマートフォンの開発に乗り出したのか。2021年10月に発売した現行モデルのMode1 GRIPの開発経緯とともに、同社がスマートフォンを作り続ける狙いをうかがった。インタビューには、ピーアップの商品開発室 室長の梅澤俊之氏が答えた。

―― まずは、テルルなどの販売店を運営するピーアップが、なぜスマートフォンの開発に乗り出したについて、うかがっていきたいと思います。

梅澤氏 6、7年前から、携帯電話を含めた生活に密着する商品を作っていこうという話がありました。弊社の代表はライフという言葉でくくっていますが、携帯電話は今やなくてはならない必需品です。では、なぜ携帯電話になったのかというと、時期的にお分かりになるかもしれませんが、当時(2015年)はちょうどMVNOが出てきたタイミングです(MVNO自体は既にあったが、2015年当時は市場が拡大していた)。

 一方で、弊社は併売店とキャリアショップの運営をしていて、テルルという基盤がありました。駆け込み寺がない家電の恐ろしさはご理解いただけるのではないかと思いますが、テルルには携帯に関するスペシャリストが集まっています。「こういうふうに使ってください」「こういう料金プランがいいですよ」ということは、併売店の店員が一番長けています。せっかくのプロがいるなら、携帯電話の端末を作ってみようじゃないかということで(プロジェクトが)発足しました。

 自社で出している製品なので、テルルに来ていただければ何かしらのサポートやアドバイスは受けられます。今ではなくなりつつある、安心感のある販売ができるであろう。弊社の代表もモノ作りが大好きだったことがあり、開発を始めました。

ピーアップの商品開発室 室長 梅澤俊之氏

―― といっても、スマートフォンはかなり製品として複雑で、新規参入のメーカーは技術的にも、販売的にも苦戦することが多いと思います。

梅澤氏 正直申し上げて、当社も初代は他社と同様、いろいろな形で苦労しました。日本の通信がグローバルではないため(周波数などのこと)、細かな電波の設定でミスをしたことはありました。そんな階段を1段1段上り、7年目を迎えることができています。おかげさまで膨大なデータの蓄積ができ、語弊はありますが、以前よりは簡単に製作ができるようになっています。

―― ODMで開発するということもできると思いますが、そうではないのでしょうか。

梅澤氏 5機種あるうちの1機種だけ、ODMに出しています。後はデザインから設計まで、全てこちらで起こしています。今回は、それをユーザーの方にご理解していただきたいということもあり、この変態的な縦横比の端末(Mode1 GRIPのこと)を出しました。これがODMにあるかというと、ありません。基板も一から作らなければなりませんでした。

―― その割には、2万2000円と価格も安いですね。低価格にできている理由はどこにあるのでしょうか。

梅澤氏 Mode1の開発は社長直轄で、実質的には社長と私の2人でやっています。出荷も私が担当で、修理の受付や営業もやっています。FacebookやTwitterの更新や回答も始めています。おそらく人件費で言えば、他のメーカーの10分の1以下だと思います。代表の給料(役員報酬)を入れるととんでもないことになってしまいますが(笑)。それもあって、究極にコストを落とすことができています。逆に、何をやっていないのかと聞いてもらった方がいいぐらい、全てやっています。

 やってみれば時間内にできるもので、開発は趣味で自作のPCを作るのに限りなく近いですね。(CPUの)ARMはすごいので、BOM(部品表)からパーツをチョイスするだけで、あとはひたすらパッチとOSの調整をしているだけです。

―― 開発会社は外部ですよね。

梅澤氏 中国の工場と一緒にやっています。僕がやっているのは、木の枝をそぎ落とすことで、極力余計なものを入れないようにしています。

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