春の「引っ越し難民」再発か 運送ドライバー不足復活…繁忙期ずらせば10万円の得も?

沿って : Ilikephone / On : 02/02/2023

今年の春は引っ越し難民の再発が懸念されている(Getty Images)※写真はイメージです

春の転勤や進学シーズンを前に「引っ越し難民」の再発が懸念されている。引っ越し件数がピークを迎える3月下旬から4月初めにかけての予約をめぐっては、早くも引っ越し業者が見積もりを断るケースも発生。新型コロナウイルス感染拡大後に一服感が出た運送業界の人手不足感は改めて強まっており、希望通りの引っ越し日を設定できない事態が起こりそうだ。一方、企業の間では長期的な「脱転勤」の動きもあるほか、ビッグデータによる分析では昨年春に引っ越した人の数が減ったとの結果も出ている。ただ、目前に迫った新生活を前に引っ越しを予定している場合は、あえて繁忙期をずらして日程を組むことで費用を押さえる戦略も一考の価値がありそうだ。【グラフ】3、4月の引っ越しにかかる料金は他の時期に比べて約2倍も違う■引っ越し難民の懸念は消えず「大変恐れ入りますが、現在弊社では3月15日から4月10日までの期間につきまして全てのお引越商品について完売となっております」3月下旬の引っ越しを予定している東京都内の男性は、2月下旬に引っ越し業者から受け取ったメールの文面を読んで「出遅れたか」との思いが頭をよぎった。引っ越しまで1カ月もあれば希望の日付で予約できるとの腹積もりは甘かったようだ。結局は別の業者に依頼することで事なきを得たが、ヒヤリとした瞬間だったという。「引っ越し難民」はコロナ禍前の2018年春ごろから話題となった現象。春の転勤や進学に伴う引っ越しの集中と、運送業界のドライバー不足という長期的な傾向があいまって、希望の日付で引っ越しできないケースが注目を集めた。コロナ禍後、需給の逼迫度合いは緩やかになったといわれてきたが、アート引越センターは「新型コロナ後の2020年春に減った転勤需要は回復しつつあり、引っ越し難民が出るおそれがある。当社の今春の引越予約件数は2019年春の1.3倍になる見通しだ」とみている。■ドライバー不足がじわり再燃引っ越し難民問題の再燃は、運送業界におけるドライバー不足感からも予想される事態だ。全日本トラック協会が3カ月ごとに行っているトラック運送業界を対象とした景況感調査によると、2021年10~12月期の調査で人出が「不足している」と答えた運送業者は全体の13.8%、「やや不足している」は41.3%だった。合計55.1%の運送業者が人手不足を感じているという結果だ。運送業界では新型コロナ禍直前の2019年10~12月期は、64.0%が人手不足を感じているという状況。そこに新型コロナの感染拡大で経済活動に大きな制約が加わった結果、20年4~6月期の調査では人手不足を訴える運送業者の割合は34.5%まで低下していた。しかしワクチン接種の浸透などの結果、世界的に経済活動が動き始めたことなどを背景に、昨年7~9月期以降は再び、運送業者の半分以上が人手不足となっている。春の引っ越しシーズンにも不安が漂う状況だ。全日本トラック協会は「今年の春の引っ越しに向けた予約は数量的には前年と変わらない程度とみている。ただ、ドライバー不足は簡単には解消されないので、人手不足の状況には変わりない」と説明する。■「引っ越し者」が減少のデータも一方、新型コロナ感染拡大の長期化を受けた働き方の変化が、引っ越し需要の長期的な動向に影響を与えるとの見方も成り立つ。NTTは2021年9月、「新たな経営スタイルへの変革」を目指す方策の一環として、転勤や単身赴任が不要となる働き方を浸透させると表明。旅行大手のJTBも2020年10月、転勤が必要となる事業所への人事異動が発令された場合でも、生活の拠点として登録している地域に住みながらテレワークをベースに働くことができる「ふるさとワーク制度」を導入している。引っ越しの動向に関してはビッグデータに基づいた興味深い調査もある。ゼンリンデータコムは2021年7月、携帯電話のGPS(衛星利用測位システム)の位置情報データを分析した結果、2021年春に引っ越した人の数は2019年よりも約18%減少したと発表した。1カ月単位の位置情報から最も多く滞在した地域に「自宅」があると推定し、2月時点と4月時点で自宅のある地域が変化した「引っ越し者」の数を集計した結果だという。■繁忙期を避ければ料金節約しかし全体として人の移動が抑えられる傾向があるとしても、ドライバーの担い手不足という供給面での課題が解決しなければ、引っ越し難民問題への懸念はくすぶる。さらに国土交通省は引っ越し時期が3月下旬から4月初めに集中する事態を緩和しようと、企業に対して人事異動の時期の分散を要請するなどの対策もとっている。また、引っ越しする当人にとっては、例え希望の日付であっても、春の引っ越しは経済的なデメリットが大きい面もある。引っ越し料金見積もり比較サイト「引越し侍」などを運営するエイチームが2021年までの5年間のデータを元に行った調査によると、3月に家族で引っ越しした場合の料金は15万~20万円程度。春の繁忙期を除く期間の約2倍も費用がかかった年もあったようだ。今年の春の引っ越しシーズンでは3月19日から4月3日にかけて特に混み合うことが予想されている。全日本トラック協会は「混雑する時期に料金が高くなるのは旅行などと同じ。なるべく繁忙期を避けて引っ越しをすることで料金を節約できる」と話している。

最終更新:SankeiBiz

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